思案のしどころ?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 

この秋は本当に駆け足という感があり、早くも初冠雪なんて便りも聞かれるほどで。
とはいえ、木々の紅葉は例年通りであるものか、
まだ見ごろにはまだあと少しという声が聞かれもし。

 「ああでも、私は今頃の、
  緑も少し居残ってる楓のグラディエーションが好き。」

 「ああ、それもまた見事ですものねvv」
 「……vv (頷、頷)」

どの梢も燃えるような真っ赤っ赤というのも息を飲む凄艶さがあるけれど、
緑から橙を挟んでの茜まで、少しずつの絶妙な色づきを一目の中に堪能できる、
手の込んだ染物みたいな贅沢な眼福が、
自然の成したものなれば いかにも繊細で素敵だと。
淡雪のような儚い白さが印象的な、
お行儀のいい綺麗な両手を頬にあて、
ほうという溜息つきで口にした七郎次だったのへ、
そうですよね、今はそんな木々がちょうど見頃ですしと、
平八も朗らかに微笑んで同意し。
すぐ傍らから久蔵もまた、
紅色の玻璃を据えたような双眸を細くたわめ、
細い顎を何度も引いて頷いて見せる。
冴えて澄んだ秋の朝の空気は ちょっぴり肌寒くて、
少し前なら金木犀の香りが甘くて華やかでもあったれど、
そろそろ最初の咲きどきは過ぎたのか、
今はそういえばと探さねば感じられなくて。
とはいえ、今日のこの日はそんなささやかな幸いを探す暇もありはせぬ。

 「あっ、紅ばら様が集合場所へ移動なさっておいでだわvv」
 「最初のクラス対抗100mリレーが始まりますものvv」

我らが聖なる女学園におかれましては、
ようよう晴れた蒼穹の下、
校舎の裏側に広がるグラウンドにて秋の体育祭が催されており。
日頃からも注目集める三華様がたのうち、
七郎次と久蔵という金髪双美人は、
風貌の妙なる麗しさに加えて、運動神経も発達しており。
白百合さんが剣道部で“鬼百合”との異名をほしいままにし、(笑)
紅ばらさんが高名なバレエ団にて“次代の新星”と期待されているのみならず、
インターハイや国体への選考会に出てもいいんじゃないかという俊足でもあり。
学園が誇る韋駄天娘と、生徒たちからのみならず、
教職員の皆様からもしっかと把握されておいで。
なので、いくら何でも…彼女らの周囲でばかり あれこれ騒ぎが起き過ぎる点を、
偶然だとかたまたまだとかいって看過してはいけないんじゃなかろうかと、
そこはさすがに気づいておいでの顔ぶれもたんとおいでなのだけど。(笑)
若いからという一言で片づけられないレベル、
全国大会出場クラスの俊足が発揮されてしまうと追いつける者はいないとあって…。

 フットワークの良さそうな保護者の方々への
 携帯へのホットラインを設けて周知させときましょう

そんな申し合わせを教職員の間でしているとかいないとか。(それもどうかと…)
まま、今はそっちはともかくとして。
その韋駄天っぷりが遺憾なく発揮され、
しかもその晴れ姿を全校生徒へ惜しみなく披露される大舞台。
運営のあれこれで忙しい実行委員の方々でさえ、
ごめんなさい このレースだけは観させてと
注目するあまりに手が止まってしまうのを、
周囲もしょうがないなぁと許してしまうほど。
健脚をのびのび発揮する麗しの双美人がエントリーしているレースには、
否が応でも皆の注目が集まってしまい、
来賓がほのぼの見守る他の競技が比にならぬほど、
トラック周縁がお嬢様がたの熱視線で それはもうもう熱く盛り上がるのも恒例で。
そうまでの目玉競技であるが故、

 なので…という煩悶も
 実をいや無くもなかったり

借り物競争や二人三脚、
ムカデ競走などという徒競走以外のレースもあるし、
フラッグチアを披露するマスゲームだけじゃあなく、
学年の枠を縦割りにしたチーム編成によるクラス別の応援合戦とか、
競技以外の演目もあるのだが、
それらに比べると、1つのレースはあっという間に終わるのも短距離レースならではの特徴。
なので、実行委員までもがちょっと注目してしまってもあまり支障はないのだが、

 紅バラ様と白百合様、同じ組で走っていただくとどうなるかしら?

これが毎年のように議題に上がり、
プログラムの編成締め切りぎりぎりまで意見が白熱しもするところまで恒例化しつつあり。

 “…恒例化って。”

ひなげしさん、そんな呆れたような眼をしない。(自虐)

 抽選で決めるのですから、
 たまたま同じ組となってしまったら、どうしようもないのではありませんか?

 ですから、そこが問題なのですよ。

グラウンドの広さの関係から 50m走仕様のだけという学校もあるらしいが、
こちらの女学園では全員参加のそれとは別に 100mの枠もあり、
そっちにしたって10秒ちょっとという刹那の内に繰り広げられるという大舞台。
お二人それぞれで出場なさったらお楽しみも二倍だが、
中には、お二人が競い合ったらどうなるのかなぁ…なんて
仲たがいではなくの純粋なスポーツ上の勝負となるの、
秘かに楽しみにしているお人だっていよう。
同じクラスのお二人だけれど、
リレーではない徒競走では
参加する頭数の多さもあってのこと、
同じ組で同じレースに割り振られても混乱のないよう、
順位は各人へのポイントとして加算される形になっており。

 ご当人たちはどっちでも関係ないと
 冷静に対処なさるのでしょうけれど。

 でもねぇ、
 お二人それぞれのシンパシィの顔ぶれには
 いろいろな方々がいるそうですしねぇ。

当人同士が仲良しなのだからと、
今の日頃は特に険悪な様子でもないけれど。
それぞれが女神よ女王よと讃えておわす方々が対決なさるようなことにでもなったなら、
応援の熱だって相当にあがるやも知れないし、

 まさかとは思うけれど、
 それが発端になって険悪な空気にでもなったらどうします。

 …起きますかしら、そういうこと。

基本、恵まれたお嬢様ばかりの土壌なので、
朗らかで平和な空気が一番とばかり、
いつまでも根に持つような根深いものにはさすがに至らないことでしょうが。
レースが催されるその時だけは、
あなた生意気よとか、わたくしのお姉さまが負けるはずないでしょう?などという
至らない言動が飛び出して、見苦しくも睨みあうよな空気になるやも知れないと、
深慮遠望、それは思慮深い委員会の方々は、
百のうち千のうちにも間違いがあってはならぬとばかり、
様々な可能性を想定なさるようで。

 “それでかどうか、今年も二人は別々の組で走るようですね。”

リレーでは当然同じチームなので、
彼女らがバトンを渡し合うレースもあるようで。
当日の撮影は専門のカメラマンの方へ依頼してあり、
スマホや携帯の持ち込みは原則禁止となっているけれど。
こんな見せ場を逃してなるものですかとばかり、
スマホどころかデジカメまで持ち込むお嬢様もおいでなのへ、
今年も拍車がかかりそうだよなと。
黄色い声に送られて、
すんなりした背条を伸ばし、出場レーンへ向かう久蔵さんを見やりつつ、
こちらさんはその片割れ、
七郎次さんとの二人三脚がまずはの出番となるひなげしさんが、
やれやれなんて呟いてたりなさる。

 “私としては、
  何か起きた折、二人がともに出番になってるのは困りますからねぇ。”

誤魔化しつつ場を離れるにしても、
主役が揃って退場だなんて
どんなに納得のいく事情を構築できたって目立つことこの上ないじゃありませんかと。
こちらはこちらで、私設防衛隊の活動への支障になるからという
至極 切実(?)で判りやすい事情から、
そんな事態にならなくてよかったなんて
胸を撫で下ろしていたりするのだが。


 「…言っておきますけれど、
  何か工作なんてしちゃあいませんからね?」

 「???」
 「どしたの、ヘイさん。」

それは爽快に晴れた高い高い青空の下、
権謀術数になんて全くの全然縁のないだろう
清らかな乙女たちが集う女学園は、
今日一日、それはそれは健やかな歓声の中で
新しい思い出の1ページとなる幸いな刻を過ごすのでありました。



   〜Fine〜  15.10.12.


 *こないだあれやこれやと新規のツールをお試し中だったお嬢様がたでしたが、
  特に予見があったわけではないようで。

  「とはいっても、油断も隙もないのがお主らだからの。」
  「あ、ひっどーい、勘兵衛様ってば。/////////」

  百歩譲って、かつての盟友でもあるアタシらですのに、
  そんな言いようはあんまりですよぉと。
  来賓として出席なさった警視庁総監様への
  本日だけSP総括担当としてお越しだった某ヒゲと長髪の警部補に、
  逢えて嬉しい気持ちの方が勝さってか
  失礼なとか心外なとかいう方向で怒っているにしては…
  笑顔満面の白百合様だったら可愛くって萌えますが。(笑)

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